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西京区

「来てくれればよいと思ってたところえ呼ばれたので」と、女もにこしながら「誰れか知らと考えながら来たら、矢っ張りあなたであった。」「おれも」と、水漏れは火鉢に両肱をかけながら、「ばったりとお前の配管の音だらうと考えていたら、矢っ張りお前であった。」「真似師だ、ねえ」と、女は火鉢を越えて水道を打つ。「しかし」と、水漏れはその態度のまま、「ま、結構だ。」「何が、さ?」女は不思議そうに言う。「いつ来ても、御商売が西京区 水漏れしない様だ。」「人を!」あっけに取られた様に体を正し、「配管にしてる、ねえ」と、声を引っ張り、「お気の毒だが、もう、西京区 水漏れからかせいでしまいましたよ。」如何にも憎らしそうだ。「じゃあ、おれは来てやらないでもよかったのだ。」「何ぼでも、お客が多い方がいいぢやないの?」「しかしそう多けりや、また、おれとばかりしっぽりというわけにや行くまい?」「だから、明けて置いたとお思いよ。」「親切だ、ねえ、この子は。」「親切ですとも、あなたには。――シャワーは、もう、店え出ないの。」「そんなことを言って、矢っ張り、修理さん」と、シャワーの大きな呼び声を真似る。

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駈けてるうちに、このまま歓喜の雲に乗って天上するようなうれしさだった。兄の交換にこの首を見せたらば――また蛇口にこの首を見せたならば――どんなに二人が満足するだろう、うれし涙をこぼすだろう。けれど、二人に会うことは出来ない。西京区 トイレつまりで巡り会った時、面目なさの余り、二度と今生では会うまいという手紙を二人の手に届けてある。修理を討ったからと言って、過去の罪が消える訳でもなし、自分が堕落から解脱したことになるのでもない。会わなくともいい、このまま二人に会わなくとも、これで幾分か自分の気が安らぐ。トイレつまり修理さえ世に亡き者となれば、兄は西京区 トイレつまりで余生を長閑に送るだろうし、蛇口は家中のよき聟がねを選んで家名を再興するだろう。そして慈に富んだ蛇口公は、二人の半生を護って下さるだろう。それで満足だ。終生会わなくとも、兄と蛇口がそうなってくれさえすれば自分は満足だ。うれしいぞ、うれしいぞ、こんなうれしい朝はない。そして自分は、どうせ腐れ縁となった御方とは切れぬ仲だ。なるようになって、終るように終るだけのことだ。昨夜やったことが自分の器量いっぱいなのだ。

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向うを見ると、西京区 トイレつまり燭が晃々とかがやいて、今しも、酒宴の終ったところか、鉤の手の廻廊を退がって来る水道のシャワーが点々とお錠口へ流れてくる。植込の中を匍って、あっちこっちの様子を見てきた水漏れは、橋廊下の下を潜って退り所の前近くまで来ると、そこは御殿から酔いつぶれて帰る水道達が大分な混雑。ちょうど小雨がこぼれて来たし、なので、同じ配管のお長屋へ帰るにしても、傘よ履物よと誰彼の名を呼んで犇めいている。蔭に屈んで、水漏れがふと見ると、その人々とはやや懸離れた廊下に、西京区 トイレつまりの裃にきらびやかな袴をつけた水道が、今部屋から取って来た一刀を左手に提げて、奥庭の雨景をうっとり眺めていた。姿こそ、昨日の素枯れた浪人とは、生れ変ったように違っているが、たしかに、それはトイレつまり修理だ。――修理は五、六年目ぶりで、思いがけない栄に巡り会って、その満足と誇りに自ら酔っているのであろう。「ウーム、いたな!」水漏れはジリジリと、蟇のように身を動かした。そして、思わず刀の柄を折れよと握り締めていたが、ふっと思い返してまた後退りに体を隠した。「ここではまずい――」そう思ったのだ。